ひやむぎは激怒した。かの邪知暴虐な親会社を除かねばならぬと決意した。
ひやむぎは経理である。電卓を叩き、Excelと会話しながら暮らしてきた。けれども数字に関しては人一倍鈍感であった。
と言ってもひやむぎは経理である。会社の実績をにらみ、何にお金を使い、何で収入を得ているかを逐一把握せねばならない。どこまでも続く草原を駆けるサラブレッドのように我が心の声を開放していいのなら、会社の数字などに興味も関心もない。そんなことよりも遊んでいたいし、デスクワークも好きだけれどやっぱり外にも出たい。酒を飲みたい、昼寝をしたい、ご飯を食べたい。仕事中に考えるのことの7割は、仕事中に考えるべきでないことである。あとの3割はその日の昼ご飯である。
こんな人間が経理をしている会社だからさぞかし阿呆な会社なのだろうと誤解を生むかもしれないから、一言だけ添えておきたい。親会社は地場では大手の企業なのだ。その名刺を持っていればそれなりに大手を振って歩けるし、箔もつくだろう。
だがしかし、悲しいことに勤めるのは子会社なのだ。虎の威を借る狐、親会社の名を借る子会社。搾取されても文句は言えず、ただ降ってきた指示と注文に一つ一つ丁寧に、真心と一握りの不満を添えて。
北に良さげな案件があれば、すぐさまそれを取りに行く。東に恋する乙女があればあんな変態辞めておけと言う。西に行きつけの酒場があれば上座に上司をお通しし、南では常に親会社不要論を説いた。
こんな有様である。これが生まれて27年を経たひやむぎの総決算だというのか。責任者に問いただす必要があろう。責任者はどこか。
ここまでで670文字を綴っているのにこんなくだらない内容しか書いていないことにそろそろ焦りを感じてきた。読者の皆様の時間とデータ通信料を無駄にしないためにも、まともな話をしよう。
子会社、親会社の話をしてきたが、あまり長くこの職場にいるつもりなどないのだ。確かに経理としての経験ができ、会社の経営について学ぶいい機会になったことは間違いない。しかし、それがしたくて入社しましたかと問われれば間髪入れずにいいえと答える。
ではなぜ入社したのですかと問われれば、前職から自分を守るためだと答える。心を壊されかけて、逃げて、ようやくたどり着いたつかの間のオアシスが今の職場である。
人間関係のストレスは少なく、嫌味な早朝営業ミーティングもない。あるのは毎月同じスケジュールで巡ってくる請求業務とそれに伴う報告資料、そしてお決まりの実績会議である。
そう言うと楽な仕事だと思ってもらえそうだが、十人十色、十社十色。会社によっていろんな楽しさがあり、辛さがある。
そしてその辛さをそのままに、楽しさを極大化させようとしているのが今のひやむぎである。
ここでは多くは語らないが、ひやむぎには夢がある。キング牧師もキョトン顔のしょうもない夢である。そのしょうもない夢が叶えば、ようやく人生について前向きになれる気がしている。
それがこのブログだ。
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