HIYAMUGI WAR〜蚊との戦い〜

日記

開戦の火蓋はとても静かに切られた。

晴れた昼下がり。ひやむぎは家事もそこそこに平和なのんびりタイムを過ごしていた。

一服から戻った禊が洗面所に向かう。これから夕飯まで何をしようか。そう考えていた時だ。

ひやむぎの視界にくっきりと飛行物体が映った。

黒くて細いフォルム、腹部の白い線状の模様。

ヒトスジシマカだ。

気温が上がり湿度が上がった昨今、一年ぶりに対峙となった。

突如として始まった、庭から入り込んだ蚊との戦い。生まれた時から鈍足のひやむぎを俊敏な蚊が弄ぶ。

痒みの地獄へと誘う吸血生物から家庭の平穏を守れるのか。

福岡市史上最も呑気な戦いが今始まる。

そんなことをわざわざXにポストした。

こういういらんことをわざわざリアルタイムで書くから敵を見失うというのが未だに分からない元帥ひやむぎ。

スーパーマリオをプレイしている時でさえ、ノコノコ・パタパタ連合軍の策にハマり残機を無駄にするほどだ。リアルでの戦闘などハナから荷が重い。

如何なる時も気がつけばスマホに手が伸びてしまう。フォロワーさんたちにシェアハピしたくなってしまう。

もしかするとスマホは敵国がこの世に送り込んだトラップなのか。こちら側がスマホに夢中になっているうちに家庭に斥候を送り込み、隙をついて大群で一挙に攻め入るつもりか。

おのれ孔明。

いや、ここにおいて孔明はなんも悪くないけどなんか言いたくなった。ごめん孔明。

恨むならうちに入ってきた蚊を恨んでくれ。そしてついでに退治してくれ。

もとい、おのれバトルシップ モスキートめ。

見つけては見失い、また見つけては見失う。空港にある変な形したレーダーの如く部屋中をくまなく探すが、一向に見つからない。ルパンを探すとっつぁんもこんな気分なんだろうか。

朝から蚊取線香2個を同時燃焼させた腹いせだろうか。そう思いを馳せていると、禊少尉から伝令が入った。

「そこにおる」

走る緊張、張り詰める空気。見ればひやむぎの右前方に敵機の姿が。

こちらを嘲笑するのようにゆらゆらと飛ぶ蚊。

この20分間幾度もその影を見た。追いかければ見失い、攻撃を躱された。確かに掌には触れたのに。

ここで会ったが100年目、ここで仕留めぬは家主の名折れ。禊に玄関から締め出されてしまう。

刹那、ひやむぎの両手が素早く空を切る。

やったか。仕留めたのか。確かに触れた感触はあった。

はやる気持ちを抑えつつ自らの掌を見る。

奴の姿はない。

馬鹿な。あれほどしっかりと触れたのにそんなはずはない。

ゆっくりと指を開くと、右手人差し指と中指に挟まれるようにして、奴は息絶えていた。

勝った。ボク勝ったよ。ついに勝ったんだ。

しかしなんとも奇妙な仕留め方である。蚊も思っただろう。せめてど真ん中ストライクで仕留めろと。

しかし勝ちは勝ちである。

再び我が家に平穏が訪れた。禊に叩き出されずにすむ。これからもこの家に住める。

噛み締めるように文章を綴るひやむぎに禊が「馬鹿じゃないの!」と辛辣な言葉をぶつけたが、それでも声高にこう叫びたい。

平和というのはなんと素晴らしい。

フォロワー諸賢においては日頃から網戸をフル活用し、また蚊取線香を切らさぬよう用心していただきたい。

文明の発達により最先端の蚊取グッズも展開されているようだから、これを機に取り入れるのも得策かもしれない。

とにかく、戦いは終わったのだった。

めでたしめでたし。チャンチャン。

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