結婚式のスピーチ頼まれました。何話そうかな。その③

バス

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こんにちは、ひやむぎです。前回中学校での思い出を書きまして、その後別々の高校に進学しそれぞれの青春を過ごします。そしてこれまた別々の大学に進学するのです。

再会は実家の下

大学生になったひやむぎは学習塾の英語講師のアルバイトをしていました。

大橋駅前の塾で仕事を終えて自転車でえっちらおっちら、帰宅は23時30分くらい。数か月前にオープンしたばかりの、家の下にできたファミリーマートで夜食とお酒を買って帰ります。

♪ちゃららららら~ん、ちゃらららら~ん♪(ファミマの入店チャイム)

いらっしゃいませ~!

夜中に元気やなぁ…こっちはヘトヘトだよ。あぁ~今日もよく働いた。OLみたいなサラダとストゼロ。風呂に入ってYouTube見ながら食べて…っと。

なんて考えながらレジに向かうと…。

店員さんがニヤニヤしながら僕を見る。

久しぶりに会う友人がレジにいた。

ええ~!ここのファミマでバイトしよったん!とびっくりしたが、聞けばあと数分で上がる時間だというからイートインでファミチキ食べながら待っていた。

数分後出てきた友人は、いつしかタバコを吸うようになっていて驚いた。だけど中身はあの頃と変わらない。自分からよくわからないニッチな知識を話し始める。勝手に話し始めるくせに大体僕も好きな話だから質が悪い。かくして話に引き込まれ、いつの間にか時計の長針がぐるっと1周しているのである。

そしていそいそと「うわ、12時やん帰るぜ」というが、彼が「あ、そういえばこの前行ったあそこがね…」と元祖長浜家もびっくりの滑らかな替玉を出してきて、気が付けば長針はもう半周している。

これが僕らのバイト後のルーティン。ヘトヘトで眠いが、楽しくて仕方ない時間だった。

「今度さ、猪野までバスで行かん?知っとろ?猪野」

「え、知らん。どこそれ」

「知らんと?あの田んぼのど真ん中のよくわからんところで転回して同じ道通って帰ってくる猪野のバス停」

どっからそんな情報仕入れてくるんやってほど、よくわからんニッチな情報をたくさん知っているんです。そしてなぜか毎回いつの間にか話に引き込まれているという。

「あ、あとね似た路線で言えば西油山ハイツに行くやつも途中でUターンして同じ道戻ってくるけん、仮に乗り過ごしても戻って来たのに乗ればいいって言う裏技がね!」

そういう話を聞くうちにあれよあれよと計画が進み、学生の栄光エコルカードでのバス旅が決まりました。

そうしてそんなに転回が好きなのか

そういうファミマ前のやり取りで決まったエコルカードバスの旅。

僕らの出発地はいつも、旧ひやむぎ実家の真ん前にあった下の原バス停から…のはずだったんですが、待ち合わせ時間になり待てど暮らせど来ない。結局Hくんの最寄りバス停である福岡病院下まで歩いて、LINEで鬼電するのでした。

そして天神までバスで出て、最初に待ったのは31番日の浦口行き。

なんでそこのに乗ったのかというと、ただただ行ってみたかったかららしい。

近頃の僕のように写真を撮るわけでもなく、車体について熱く語るわけでもなく、ただただ乗車体験を楽しんでいた。景色を見ながら、面白そうなものがあればそれについて話したりした。

そして気がつけば寝るのがHくん、一人取り残されて車窓と運転士さんの左手を眺めるのがひやむぎだった。

そしてその次くらいに乗ったのが件の「猪野」に行けるバス。どんな路線だったかも覚えていないし、その前後でどこを通ったかも定かじゃない。ただ一つだけ鮮明に覚えていることがある。

左右どっちを向いてもとかく田んぼが広がっていたこと。

碧く広がる広大な田んぼを二分するように一直線に敷かれた道路を駆けるバス。きっと今でも走っている路線であればひやむぎバスMVに登場させたことだろう。それくらい壮大な景色だった。ドローンで撮ってもいい景色だろう。

そんなことを考えながら外を見ていると「ほら、むぎくん今からUターンするよ!」と。

そしてバスは転回場兼バス停のようなロータリーに吸い込まれていった。そして乗る人も降りる人もいなかったのでそのまま出発した。

「ここからいま来た道戻るんよ。やけんねむぎくん、例えばさっき乗り遅れた人がおるとするやん。やけどさ、ちょっと待ったらまた同じバスが来るけん大丈夫なんよ〜」

謎のドヤ顔。なぜそんなに誇らしげなのか。そして最大の疑問だが、Uターンするバスでそんなに熱くなれるか…?確かに珍しいといえば珍しい。実際僕は初めて見た。折り返し地点がある路線なんて。

ただそんなTVの評論家みたいに語れるか?と首を傾げた。しかしこれがHくんなのである。

あるときはいつものファミマの前で「渡辺通りの由来」について、またあるときは「西日本鉄道がどんな感じで今みたいになったか」を、そしてまたあるときは「柏陵高校の裏山に生きとし生ける虫たち」について語っていた。

道端のダンゴムシがどこに向かって歩いているかくらい興味のないトピックもあったが、それをどういうわけだかそれなりに楽しく聞かせてくれるのが彼なのだと会うたびに思う。

ひやむぎと禊の結婚式の送迎バスで待ち時間が会ったとき、カラオケで登場したTくん(EXILE歌ってた人)が「なんか面白い話しして〜」と無茶振りをしたのだが、間髪入れずに「マンホールとダムについて」というトピックを選んでいた。三つ子の魂百まで。おそらくこの性格は変わらんのだろう。

通ってきた道やらその他の道やらを通りつつ天神に戻ってきた。

次が最後の路線になりそうだと思ったときにHくんが言った。

「今度行くときは西油山ハイツの転回場通って、そっから椎原行こう!」

普段誰も乗らんような行き先に若い野郎二人乗ってきたから運転士さんに心配された。

翌々週くらいに決行した。早良営業所の前にあるコスモスでアイスを食べた。乗る予定のバスが来たと思ったらHくんがお腹痛いとか言ってトイレに駆け込んだ。

バスに乗れなかったのは言うまでもなく、次のバスまでの1時間Hくんのトリビア談義が続いたのだった。

夜更けに何があったの

あれからだいぶ時が流れ、僕らは社会人になっていた。大学生の頃ほどは会えなくなっていたがそれでもLINEやTwitterでのやり取りは続いていた。

そんなある日の午後10時。明日は休みなひやむぎは自室でまったりしていた。

ピロン♪(LINEの通知)

Hくんから「今から飲みいかん?」

Hくんと飲みに行くときは事前に日程を決めて行くのがほとんど。こんなに唐突な呼び出しは初めて。こんな時間から飲みに誘ってくることなんて今までなかった。

突然会いたいなんて
夜更けに何があったの
慌ててジョークにしても
その笑顔が悲しい

TOMORROW/岡本真夜

まさにこんな状況だった。しかし家は南区花畑。これから飲みに行くにしても高宮やら大橋まで出るのはそこそこに面倒。だからと言ってこの辺に飲み屋などないに等しい。というかない。

「え、どこに飲み行くの?」

「あるやん、2丁目のバス通り沿いに」

「あったっけ、あのへんって軒並み車屋か個人事業主の事務所しかない気が」

「いやいや何を仰る、浮世絵、ラパン、香月、洋子などなど様々ありますよ」

ついていくとそこにあったのは。

↑当時のストリートビュー

瞬くネオン、分厚めの扉、窓のない建物からなぜか漏れ聞こえるカラオケ。

まだ尻の青い20代前半の野郎が二人で行くところではない、地元のスナックだった。どの店にするかを考えていると、なんの偶然か眼前にあった扉が開いて常連客と思しき赤ら顔のジジイと、お天道様の下で見れば妖怪と空見しそうなほど化けの皮が厚いババアが出てきた。

「あんらぁ〜まぁ〜、この店初めて一番若いお客さんじゃなぁ〜い」

これから帰路につく常連ジジイそっちのけで、しゃがれたババアボイスが響く。ちなみにジジイは出番無しと判断したのかそそくさと家路についていた。ジジイ、ごめん。

そしてあれよあれよという間に店に通され、気がつけば手元におつまみのミックスナッツが置かれ、ウイスキーをロックで嗜む常連マダムの隣に座っていた。あまりの展開の速さに目が回りそうだったが、そういえばHくんが唐突に飲みに誘ってきた理由をまだ聞けていない。

会って開口一番に聞いたは聞いたのだが、まぁそれは1杯目を飲んでからとはぐらかされてしまった。そろそろ聞いてもいいか。乾杯も済んだし。そう思っていたときだった。

「実は…むぎくんと同じ境遇になりまして」

僕の身の上話は今回のブログの主旨とは逸れるため多くは語らないことにするが、この数か月前に僕も彼女と別れていた。つまりHくんもフラレたのだ。

誘われた時点で予想はしていたんです。声が明らかに暗かったし、そんなタイミングで急な電話となれば失恋くらいしか思い浮かばんわけで。

「あんらぁ〜お兄さん傷心中なぁ〜ん?おばちゃんが話聞こうか〜?」とハスキーママがハイボールを置きながら話に入ってくる。そして常連マダムが当てつけるかのように「糸/中島みゆき」をカラオケに入れる。

こぶしの効いた「糸」をBGMにどんな別れだったのかを聞きました。

沈んだHくんを気遣ったのか、ハスキーママがマイクを持ってきて「歌ったら気が晴れるよ」と言ってくれたんです。「あのぉ〜あれ!檸檬歌える??今流行りやし知っとろ〜?」

夢ならばどれほどよかったでしょう
未だにあなたのことを夢に見る〜…

やめたれやめたれ、こいつ泣くぞ。

逆に泣かせたかったんかな。泣いて楽になれ的な気遣い?

そのまま歌うHくん、付き合って歌うひやむぎ。1時の閉店までなんだかんだ歌ってましたが何を歌っても結局泣くことはなく、少しだけ晴れやかな顔になって解散しました。

この日を境にHくんとは会う機会がめっきり減ってしまいました。喧嘩したとかではなくシンプルにお互い仕事やら転職やらでそれどころじゃなくなったから。お互いブラック企業にいたからね、いろいろすり減らしましたよ。

だけどその間もちょいちょいやり取りはあって、唐突によくわからんツイートを見つけてはDMに送りつけてきたりしてました。転職の相談に乗ったこともありました。

地元のいつものメンバーで一番最後に仲間入りしたHくんですが、一番連絡を取り合う仲になった気がします。そんな友人の結婚式のスピーチ、11月までに考えねば…!

ということで結婚式のスピーチシリーズでした〜!

次回からはひやみそのヘンテコな日常かバスネタに戻ります!

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